【寄稿】教室と世界をつなぐ

にこPとの出会いから生まれた英語教育研究

関西大学 常勤外国語講師 田淵香奈子

英語を教えていると、「せっかく学んだ英語を、実際に使う機会をもっとつくれたら」と思うことがあります。私はこれまで、公立の中学校・高等学校で英語を教えてきました。英語の授業では、単語や文法を学び、教科書を通してさまざまな場面に触れることができます。一方で、日本の学校現場では、学んだ英語を実際に使い、「伝わった」「分かり合えた」と感じる機会をつくることは、決して簡単ではありません。そんな思いから、私はICTを活用した英語教育や、海外の学習者とつながる国際交流に関心を広げていきました。現在は、英語を学ぶことと、英語を使って世界の人とつながることを、どのように結び付けられるのかを、実践と研究の両面から考えています。

私が授業で、日本と世界の教室をつなぐオンライン交流を始めて7年程たった頃、出会ったのが「にこP」でした。若林先生から「にこP」の取り組みについてお話を伺うと、私がこれまで英語教育について考えてきたことと重なる部分が数多くあることに気づきました。「にこP」は、日本の学校と海外の学校をオンラインでつなぎ、生徒同士が英語で交流する取り組みです。教師がやり取りを主導するのではなく、生徒たち自身が海外の同世代の仲間と直接コミュニケーションを取ることに大きな特徴があります。また、単発の「国際交流イベント」で終わるのではなく、準備から交流、そして振り返りまでを一連の学びとして捉えている点にも魅力を感じました。

私にとって特に印象的だったのは、オンライン交流が単なる「英語を話す練習」にならなかったことです。生徒たちは、海外の同世代の相手と、学校生活や好きなこと、将来の夢などについて話しました。そこでは、「英語を正しく話さなければ」という意識だけではなく、「相手に自分のことを伝えたい」「相手のことをもっと知りたい」という、コミュニケーション本来の目的が生まれていました。生徒たちの英語に対する意識が変わっていく様子を見て、私は改めて、英語を使う機会を生み出すことの大切さを感じました。

こうした経験が、今回、教育奨励賞を受賞した論文 “Telecollaboration on Speaking Ability and Anxiety: A Case Study of High School Students” につながりました。この研究では、日本の高校生が台湾の高校生とオンラインで交流し、その経験が英語を話す力や「英語を話すことへの不安」にどのような影響を与えるのかを検討しました。研究のきっかけは、「生徒たちに、英語を学ぶだけでなく、実際に英語を使って誰かとつながる経験をしてほしい」という思いです。そこで、ICTを活用して海外の高校生とつながり、実際に英語でコミュニケーションを取る機会を授業の中に取り入れました。その結果、英語を話すことへの不安そのものには統計的に明確な変化は確認されませんでしたが、スピーキング能力の向上が確認されました。また、生徒たちの振り返りからは、「英語が通じた」という経験や、海外の同世代の生徒と実際に交流したことが、自信や英語を話すことに対する意識の変化につながっていることがうかがえました。論文は2025年にJASELE Journalに掲載され、同年、全国英語教育学会の教育奨励賞を受賞しました。

私自身、この研究を通して改めて感じたのは、英語を「学ぶ」だけでなく、「誰かとつながるために使う」経験の大きさです。「目の前の相手に伝えたい」「もっと話してみたい」と思える経験が、生徒の英語学習を動かすきっかけになるのではないかと思います。授業の中に「英語を使いたくなる機会」があるだけで、生徒の学びへの姿勢は変わるのかもしれません。そんな可能性を、これからも授業と研究の両面から探っていきたいと考えています。

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